帰省当時、父は変わらず軽天・内装の仕事をしていました。
私も職人として一緒に仕事をしだして数年経った頃、父が『工務店をやりたい』と言い出し、私は、二級建築士の資格を取り、工務店を起ち上げる事になりました。
元々職人として仕事をしていた時から、新築特有の匂いを感じていました。そんな時、不意に出会った漆喰、この漆喰を使うことにより健康で快適な住宅になるし他社との差別化にもなるとして、クロスを使わずに漆喰を使った住宅を造ることにしました。
しかし、漆喰住宅の完成見学会をした時、あるお客様が来られ、室内に入って一言おっしゃいました。
『このうちでも匂いがする。漆喰を使っていてもやっぱりダメね』と。
そのお客様は化学物質過敏症の方で、昔から何十年も経った古い住宅でないと住めないとお話されていました。当時、その話を聞いた時自然素材を使った家でもダメなのか、新築でこの方が住める家はあるのだろうか?と住宅のどうにもならない壁にぶつかり、そんな住宅は難しい、と諦めて頂き悔しい思いをしたと記憶しています。
2011年東日本大震災が起きた約3か月後の6月30日、松本でも震度5強の地震が発生。
地元では新築物件が激減。父と立ち上げた工務店も地震から数か月で閉店する事に。
その後、東京の工務店を紹介して頂き、再度上京し注文住宅の営業として建築の仕事に携わる事になりました。その工務店で建てていた建物は健康というよりはコスト重視、施工性重視の住まいばかり、建売住宅に至ってはどうやったら安く建てられるかとコストの事ばかりでした。