高梨　真理

地元をこよなく愛する優しい父と行動力抜群で人付き合いが大好きな母の元で姉・私・弟の３人姉弟で育ちました。

父は建築士として設計事務所を開業しており、３５年前に父の設計によって建てられた我が家は当時まだ個人住宅に用いられることが少なかった鉄筋コンクリート打ち放しで造られました。

交通量の多い幹線道路沿いだったことや見た目がカットケーキのような三角の形だったので一際目を引く建物でしたが、間取りもとても斬新でした。

そんな我が家は父の仕事場で働くスタッフを含め連日の来客や、母の友人など常に人が自宅に出入りしており、とにかく賑やかな毎日の中幼少期を過ごしました。しかし中学生になると家の間取りに段々と不満を抱くように。。。

玄関は無く庭を通ってリビングに面した大きな窓から出入りするので突然の来客に慌てる日々。広い家なのに個室やクローゼットはひとつもなく大きな納戸が１部屋だけ。窓が多く外と内が繋がっているような落ち着かない感覚。家の何処に居ても気配が感じられてしまうとてつもなくシンプルな間取りだったのです。父としてはライフスタイルに合わせて自分たちで変化させていく楽しみを想像しながら考え抜かれた間取りだったのですがその思いはなかなか響かず・・

一人部屋が欲しくなる年齢になるとごく普通の家に大いなる憧れを抱くようになりました。

しかし連日の賑やかな来客に咄嗟に引きこもる部屋もなく、個室を持つことは諦めてリビングやダイニングで大半を過ごすようになると、元来物静かで人見知りの激しかった自分の性格が少しずつ変化していきました。初対面でも自然と挨拶ができるようになり、更には色んな話ができるようになったり。子供ながらに相手のことを考えながら会話をする難しさを感じながらも、生きていく上で最も大切だと感じている基本的なコミュニケーション能力はこの時代に培っていったように思います。

そして様々な葛藤や成長の中この家と共に過ごし、進路を考える時期になった時、人生の大半を過ごす家の間取りがそこに住む人々の人格形成に大きな影響を及ぼすのではないかと考えるようになり父と同じ建築を学ぶ道を選びました。

良くも悪くも様々な思い出が詰まった我が家が、今の私の原点となっているのです。

社会人になり、設計担当として工務店で働かせてもらっている時に無添加住宅に出会いました。無添加住宅開発者の秋田憲治さんに独自の設計手法を直々に教えていただくことになり、光・風・緑を見事に取り入れながら自然素材の特徴を生かすプランニングはそれまでの固定概念を覆す発想でした。そのノウハウをしっかりと自分の中に落とし込み、無添加住宅認定プランナーに１発合格した後、無添加住宅を含め様々な住まいの設計に携わってきました。その後に結婚・出産・子育てを経験し、生活スタイルが随分と変化した今も光・風・緑を取り入れる基本的な考え方は変わっていません。また、守るべき大切な子供たちを思うと、余分なものは削ぎ落して本物だけを残していきたいと強く思うようになりました。