𠮷田　幸矢

私が住宅業界に飛び込みたいと強く思っていたルーツは、幼少期から成人するまでに過ごしてきた住まいに対するコンプレックスからでした。社宅から借家へ移り住むなかで、子供ながらに比べていたのでしょう。少し後ろめたい気持ちを抱えていたことを憶えています。友達を自宅へ招くことを控えていたのを憶えています。

23歳の時、中堅ハウスメーカーへ念願の住宅営業として入社。26歳、結婚を機にマイホーム、2世帯住宅を取得しています。その住まいで育ったふたりの娘も今は成人し、今後の楽しみは新しい家族と言ったところでしょうか。

当時の住宅業界は耐震や断熱性能、設備品などの『物』比較が主流で、それらの情報を得るためにお客様が自ら足を運び情報を得る必要のある、いわゆる売り手市場だったと言えます。バブル崩壊直後の住宅業界は、住宅ローン金利は毎年利下げの続く「低金利時代」へ突入していきます。消費税の導入、地盤保証制度、性能評価制度など様々な制度の導入や改定などがある状況の中、営業職・中間管理職・支店責任者・事業責任者を経験し、やりがいと使命感に突き動かされていました。

組織運営が主な業務となっていた頃、業界の実情を知り得た上で心の底から良い家と思えるものを探していました。新商品提案に生かそうと考えていたのです。

当時一番信頼をおいていた工事統括責任者へ相談をし、地域の工務店の家づくり見学会へ参加しました。無垢材をふんだんに使い、技術を駆使したその家は、室内の間仕切り壁にデザインされた大谷石を使い、大空間で開放感のある住まいでした。我々の大量生産された住宅にはとても真似のできる代物ではありません。

提供している住まいと自身で良いと思う住まいに乖離が生まれたのはこの頃からでした。

そして入社18年目を迎える年、2008年9月「リーマンショック」の煽りを受け翌年１月に倒産。従業員数1,600名の会社が一瞬にして終わる経験をします。

急成長の過程で起きた破綻劇。自社で総てを行う一貫生産体制でプレカット工場を所有し、配送まで行うパワービルダーと呼ばれた会社の破綻は、多くのお客様へ取り返しのつかない損害を与えてしまいました。

あの時のことは今でも鮮明に記憶しています。

17年務めた住宅会社の倒産を機に、自分自身が考える『本当にいい家とは何か』を追及しながら悶々とした日々を過ごしていました。大手ハウスメーカーやビルダーでは真似のできない自然素材でつくる家には地域に根差した工務店が最良である。この答えは導き出していましたが、それぞれに一長一短があり良くも悪くも迷いがありました。

そんな中、すでに起業し無添加住宅を全国で一番販売し、設計・施工実績のある小泉社長(当時は友人として)から無添加住宅について教えていただく機会を得ます。そして私は「本当にいい家とは何か」の答えを見つけることになります。話を聞いた私はこれ以上のものはないと確信し、迷わず無添加住宅を取り扱う地元の工務店(愛知県名古屋市)へ就職。

今は、きっかけをいただいた小泉社長のもとで住宅事業に勤しんでいます。